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太陽光発電のメリットとは? 実はEVと太陽光は相性抜群だった!?

2022年10月6日


太陽光発電のメリットとは? 実はEVと太陽光は相性抜群だった!?




温室効果ガスの削減目標や、ウクライナ侵攻を背景にした原油価格の高騰などにより、世界のエネルギー政策は大きな影響を受けている。一方で、自動車メーカーはエンジンからEV(電気自動車)へのシフトを急ピッチに進めており、電力需要は今後も拡大していくことが予想される。こうした動きの中で、太陽光発電やEVはこれからどのように進展していくのか。日本において、本当にEVの普及は現実的なのか。立命館大学理工学部の峯元高志教授は、太陽光発電を高度なエネルギーマネジメントと両立することによって、EV化は十分に可能だと語る。

〈この記事のポイント〉
● 最も低コストな再エネは「太陽光発電」
● EVと太陽光発電、実は相性がよかった!
● 太陽光発電のコストは将来的にもっと下げられる
● 進む太陽光パネルの薄型化やフレキシブル化

「太陽光発電」こそ、日本の再生可能エネルギーの筆頭

EVを見かける機会は増えてきたが、日本におけるEVの普及率は先進各国と比較しても低い水準にとどまっている。一般社団法人日本自動車販売協会連合会が発表している「燃料別販売台数」によれば、2021年の日本の新車販売台数のうち、EVはわずかに約0.9%だ。
逆に言えば、まだ非常に限られたEV普及率だからこそモビリティに必要な電力が賄えているに過ぎないともいえる。EV時代の到来を前に、脱炭素時代における日本の発電ソリューションとして「太陽光発電」のポテンシャルはどのようなものか。

脱炭素化を考えると、今後の電源としては、原子力発電か再生可能エネルギーしかありません。とはいえ、原子力発電には環境負荷の懸念が残るので、やはり有力な選択肢は再生可能エネルギーということになります。
日本での再生可能エネルギーには、地熱や風力も考えられますが、陸上での風力発電は、風車の設置にあたっての制約や調整の必要性がありますし、洋上風力発電は現時点では、海外メーカーが先行していたり、大規模な設置にはまだ時間がかかるという課題があります。
そこで、太陽光発電を『分散型電源』として使うことが、社会に浸透させやすいという点からも適していると考えています」(峯元教授、以下同じ)

家やビル、工場の屋根を太陽光パネル化する「分散型電源」の可能性

太陽光発電では、広大な土地に発電パネルが並ぶ「メガソーラー」が思い浮かぶが、急峻な地形が多く、平坦な土地が限られる日本では適地に限界がある。では、「分散型電源」とは、実際にどのようなイメージなのだろうか。

分散型電源として考えると、第一に検討すべきなのは住宅の屋根です。既に東京都では、新築戸建て住宅の太陽光発電設備の設置を義務化する方針です。また、産業分野でも工場の屋根に太陽電池を載せることが考えられます。ただし、現在の太陽電池は、基本的には厚さ3.2mmのガラスとアルミニウムのフレームで構成されているので重く、工場の屋根の耐荷重が十分でない場合には不安が残ります。
一方で太陽電池の価格は大幅に下がっていて、現在は価格が安く、しかも高効率の中国製パネルが中心です。しかし、太陽電池の材料であるポリシリコンを製造している中国ウイグル自治区の工場で強制労働が行われている疑いがあり、アメリカでは中国産の輸入を制限しています。欧米でも国産製品を優遇する動きも生まれているので、日本における太陽光パネルの調達にも影響が懸念されます

再生可能エネルギーのうち、特に我が国においては太陽光発電の活用が極めて重要になる可能性が高い。そのためには、太陽光パネルの軽量化や国産化なども課題といえるだろう。

東京都環境局 太陽光ポータルサイト
東京都環境局では、「太陽光ポータル」サイトで太陽光発電に関する条例など、さまざまな情報発信を行っている

太陽光発電とEVは、実は相性がいい!

では、太陽光発電の拡大とEVの普及は、現実問題として両立できるのだろうか。峯元教授は、「太陽光発電はEVと相性がいい」と語る。

「太陽光発電は昼間に天候任せでしか発電できません。また、太陽光発電の電力は売電できますが、電力需要よりも発電の方が過剰になると出力抑制がかけられ、熱にして捨てるしかなくなります
そこで、蓄電池に蓄えるのが望ましいのですが、蓄電池のコストが高いという問題があります。たとえばTeslaのPowerwallという蓄電池は、蓄電容量が13.5kWhで約100万円にもなります。日本の家庭における1日の電力消費量は平均で11.8kWhほどですから、災害などによって電力の供給が絶たれた場合、13.5kWhでは1日しか持たないことになります。
それに対してEVの車載バッテリーには50kWhを超えるものもあるので、EVから家庭に送電できれば、春や秋で3~4日、夏や冬でも1~2日は電気のある生活が送れるはずです。EVのバッテリーコストは車両価格に含まれていますから、蓄電池を別途用意するのと比較してもメリットが高いのです」

太陽光発電とEVの運用モデル
産業技術総合研究所・櫻井啓一郎氏の作成(YouTube太陽光発電大学でも解説)

上の図は、太陽光発電とEVの運用モデルの例だ。太陽光発電ができない夜間は敢えて充電せず、余剰電力が発生しやすい昼間に職場でEVに充電する。EVに蓄電した安価な電気は夜に家庭で活用することもできるというわけだ。
実際には天候やほかの発電も含めたきめ細やかなエネルギーマネジメントが必要になるが、IoT技術の活用で課題をクリアしていけば、電力需要の平準化にも役立つ。

太陽光発電の「限界費用」をできるだけゼロに近づける

上で紹介した太陽光発電とEVの活用はひとつのモデルに過ぎないが、分散型電源の普及とエネルギーマネジメントが高度に両立できれば、技術的にも実現可能性は十分ある。では、発電コストをさらに下げていくためには、何が必要なのだろうか。

「太陽光発電には太陽光パネルの設置費用などが必要ですが、燃料にあたる太陽光はタダなので、電力料金を安くすることは可能です。
経済分野に『限界費用』という用語があります。簡単に言えば、『1つの価値をもう1つ追加するのに必要なコスト』を意味します。たとえばインターネットは1回コンテンツをつくると、それをもう1人に配るのに、費用はほぼ必要ありません。つまり限界費用はほぼゼロということになります。
太陽光発電は初期費用がかかりますが、燃料費はゼロです。あとはメンテナンスなどの費用が必要なので、これ下げていくことで限界費用をゼロに近づけることも可能になり、電力料金は安くなります。EVも同様に初期費用(車輌購入費)とメンテナンス費は必要ですが、太陽電池からの電力を燃料にすれば、EVを使った移動自体も限界費用をゼロに近づけることが可能です」

もちろん限界費用を完全にゼロにすることはできないが、太陽光パネルの発電能力や蓄電池の寿命も日進月歩で向上している。太陽から届く光という恵みを活用し、思いのままに移動することができる未来も、十分にあり得る。

太陽光発電に必要な幅広い連携と、新しい太陽電池の開発

太陽光発電のメリットとは? 実はEVと太陽光は相性抜群だった!?

現在、峯元教授が取り組んでいるのは、軽量でフレキシブル、そして付加価値の高い新しい太陽電池の研究開発だ。

「現在主流の太陽電池は結晶シリコンを使ったもので、重くて設置できる場所も限られます。そこで今取り組んでいるのが、自動車の曲線部分や道路や農地など、さまざまな場所で使える軽量で、フレキシブルな太陽電池の開発です。具体的には、銅やインジウム、ガリウム、セレン、硫黄を使ったCIS太陽電池や、ペロブスカイトという素材を用い、シートに印刷して折り曲げることができる太陽電池の高効率化や高耐久化の研究を続けています」

また、新しい太陽電池の研究開発の一方で、峯元教授はYouTubeでの情報発信やコンサルティング業にも乗り出している。

「太陽光発電が活用され、社会に浸透すると、太陽電池業界だけでなく、住宅や自動車などの関連業界、官公庁や自治体などとの幅広い連携が必要になります。それによって社会への浸透はさらに進むはずです。YouTubeでの情報発信は、太陽電池を若手研究者や他分野の専門家にも理解してもらい、研究開発や連携を促進するために行っています。また、太陽電池のビジネスに参入する中小企業やベンチャーに向けて、必要なアドバイスやコンサルティングを行うために、2019年にスカラーズ株式会社を設立しました。こうした取り組みによって、太陽電池の研究開発が促進できると考えています」

Youtube 太陽光発電大学「太陽光発電で脱炭素ってどうやるの?」

立命館大学理工学部 峯元高志教授

峯元高志

立命館大学理工学部 教授。立命館大学で博士号取得後、デラウエア大学エネルギー変換研究所(米)でポスドク研究員、その後、立命館大学にて薄膜太陽電池の高効率化技術開発、太陽電池モジュールの屋外実証試験などを展開。2019年にスカラーズ株式会社(太陽光発電の研究開発コンサル)を創業、2020年にYouTube太陽光発電大学を開設し、院生・若手研究者・異業種の研究者に向けて太陽光発電の知識を発信中。

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