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はやぶさ2の前にこっちもスゴイ! 隕石内部に超強力炭酸水を発見!?

2021年9月21日


2012年に米国カリフォルニアに落下した「サッターズミル隕石」。このたび、その隕石に含まれる鉱物から、「液体の水」が発見された。しかもその水は、二酸化炭素(CO2 )を豊富に含む「超強力な炭酸水のようなもの」だった。水も炭酸水も地球上では珍しいものではない。しかし、隕石内部から発見されたことは、太陽系形成時の謎を解く上で大きな意味を持つことだという。この成果から導き出される、宇宙の秘密の一端とは?

〈この記事のポイント〉
● 世界で初めて、隕石の中から「液体の水」を発見
● 発見された水は、超高濃度の炭酸水だった!
● その濃度が成立するのは直径200km以上の母天体
● 太陽系形成時の惑星の軌道変化を裏付ける証拠にもなった
● はやぶさ2が持ち帰ったリュウグウの砂の分析にも期待

隕石から「液体の水」、実は世界初の発見!

宇宙空間から、地球の重力に引き寄せられて落下する地球外物質は、1日に数100
トンとも言われる。大気との摩擦によって燃え、「流星」として夜空を彩り、ほとんどは地上に落ちる前に燃え尽きてしまう。
その中で、サイズが大きい一部のものが地上に落下することがあり、隕石と呼ばれる。2012年に米国カリフォルニアに落下した「サッターズミル隕石」もそのひとつであり、今回その隕石から「液体の水」が見つかった。発見に携わった、立命館大学 総合科学技術研究機構の𡈽山明教授に聞いた。

サッターズミル隕石の一部

「これまで地球で発見された隕石からも、鉱物の結晶の中に水の痕跡は見つかっていました。そのため、『液体の水も存在するはずだ』と多くの科学者が考えていましたが、これまで見つけることができなかったのです。
私たちの研究チームは、サッターズミル隕石に含まれる鉱物をX線ナノCTと呼ばれる、鉱物内部を画像化する装置で分析し、水の手がかりを発見。低温下で水が凍るという現象を利用して、電子線の回折による分析を行い、水が液体として存在することを突き止めました」(𡈽山教授、以下同じ)

透過型電子顕微鏡(TEM)で見た、サッターズミル隕石の一部。水色の円で囲った部分をさらに詳細に分析し、暗く見える所に液体の水が存在する証拠を見つけた。

今回の発見は、立命館大学、京都大学、東京工業大学、北海道大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)、NASAジョンソン宇宙センターの6者からなるチームによる。世界の科学者たちが仮説を持ち、待ち望んでいた発見が日本を中心とした研究チームによって達成されたのだ。

「液体の水」はただの水にあらず 15%以上の超強力炭酸水だった

今回発見された水の特異な点は、そこに多量のCO2 (二酸化炭素)が含まれていたことだ。CO2が含まれた水とは、すなわち「炭酸水」を意味する。隕石が形作られた際、水と共にCO2が存在し、それが溶け込んだと考えられる。

「発見された水の中に、CO2が15%以上という極めて高濃度で含まれていました。炭酸水は皆さんにも馴染みのあるものですが、炭酸飲料として飲まれているものは、強炭酸をうたっているものでもせいぜい数パーセントに過ぎません。濃度15%の炭酸水が成立するのはどんな環境か? そこからさまざまなことがわかってきます

市販の炭酸水は天然のもののほか、高圧下で水に二酸化炭素を溶け込ませることで作られるものも多い。より高圧であるほど、炭酸=CO2の濃度は高くなるというわけだ。

「隕石から高濃度の炭酸水が見つかったということは、この隕石を構成する鉱物が、極めて高圧の場所で生まれたことを示唆しています。圧力の原因としては天体内部の圧力が考えられますが、濃度15%以上の炭酸水を実現するためには、直径200km以上の天体でなくてはなりません。サッターズミル隕石の母天体は、かつてそのくらいの大きさがあったことがわかります。
また、水とともにCO2も存在していなければ炭酸水にはなりません。CO2は当時太陽系に存在していたCO2の氷だと考えられます」

発見されたのは、ナノレベルの極めて微細な水である。しかし、そこから導き出される“宇宙の秘密”は、非常に大きなスケール感を持っていることがわかるだろう。
今回の発見の成果にはさらに続きがある。時は46億年前、太陽系ができた頃にまでさかのぼる。

46億年のあいだ、太陽系の惑星軌道は変化しなかったのか?

サッターズミル隕石は「炭素質コンドライト」と呼ばれる種類の隕石で、有機物をはじめとするさまざまな化合物の形で炭素が含まれているという特徴がある。実はこの炭素質コンドライトは、太陽系形成当時に生まれ、当時の情報をよく保存している物質なのだという。

「炭素質コンドライト隕石だけでなく、多くの隕石ができたのは45.6億年ほど前、つまり太陽系形成の極めて初期だと考えられています。つまり、隕石というのは、人類が実際に触ることのできる“最も古い物質”といえるでしょう。炭素を含む化合物は高温になると変化が起きやすいものです。サッターズミル隕石は、有機物が高温にさらされることなく残されていることから、形成当時の状態をそのまま残していると考えられます」

では、その太陽系ができた頃の姿を残したサッターズミル隕石から「液体の水」が発見されたことは、何を意味するのだろうか。

「これまで、太陽系の形成についての研究は、主に天体力学に基づいて行われてきました。宇宙空間の中で、重力で物質が集まったり、衝突してバラバラになったりする。水金地火木…という惑星の配置がありますが、現在の惑星の軌道のあたりで惑星が作られたという仮定のもとに、天体力学による研究が従来進められてきました。
しかし、2000年代になってから、その仮定による太陽系形成モデルにさまざまな不都合が生じてきました。現在考えられている新しいモデルは、「惑星や小惑星は形成後に軌道を変え、その結果、現在の位置にたどり着いた」というものです」

惑星の軌道が変わらなければ、隕石に「強炭酸水」は存在しない!

サッターズミル隕石を含む小惑星のほとんどは、火星と木星の間にある“小惑星帯”と呼ばれる領域に集中して存在している。しかし、サッターズミル隕石が形成された当時、木星の内側は比較的高温であり、二酸化炭素(CO2)は氷として存在することができなかったのだという。

右にいくほど太陽系の温度が下がり、太陽により近い場所でもH2OやCO2が氷として存在できるようになってきた。

「サッターズミル隕石から液体の水が見つかったことは、『もともと木星の軌道の外側で形成された小惑星(隕石の母天体)が、太陽系の形成時に木星自身が軌道を変化させていった過程で、木星の軌道の内側へと移動した』という新しい仮説を裏付ける大きな発見といえます」

太陽系の構造が変化したという仮説について、今回物質科学的な証拠が示されたことは、天文学や宇宙物理学にとって大きなインパクトを持つ発見なのだ。「隕石から液体の水が見つかった」という事実の持つ意味は、我々の想像よりもはるかに大きい。

はやぶさ2が持ち帰った小惑星リュウグウのサンプル分析もスタート!

𡈽山教授は、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰った砂などの分析にも携わっている。さらなる発見に向けた期待と意気込みを聞いた。

立命館大学 総合科学技術研究機構 𡈽山明教授

「いままさに、小惑星リュウグウから来たサンプルの分析を開始したところです。そこでもぜひ、液体の水やCO2をぜひ見つけたいと思っています。もしCO(一酸化炭素)も見つかると、さらに太陽系の外側(低温領域)でできたということになります。リュウグウの母天体がどこでできたのかを推定できれば、太陽系形成についての新たな事実がわかるかもしれません。
私の専門以外の部分では、小惑星物質に含まれる有機物の解析にも注目しています。地球の有機物は、地球でできたという説と、隕石中の有機物が原材料になったという説に大きく分かれています。その手がかりに迫ることができるかも、興味深く見ています」

地球に落ちた隕石も、リュウグウから持ち帰った砂粒も、見かけはただの小さな石に過ぎない。しかし、そこには46億年という、太陽系が経てきた歴史を紐解くヒントが残されているのだ。𡈽山教授によるリュウグウの分析についても、今後shiRUtoで続報をお届けするので、ぜひ楽しみにしていただきたい。

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shiRUto 編集部

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