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錯視の第一人者が解説!「止まっているのに動いて見える」目の錯覚を自作する方法

2021年12月2日


錯視画像



タイトル画像は、レンコンの穴が回転している「GIF画像」である。……というのはウソで、実は完全なる静止画である。このように、止まっているのに動いて見えたり、実際の色とは違う色に見えたりする、いわゆる「目の錯覚」を専門用語で「錯視」という。
今回は、日本の錯視研究の第一人者、立命館大学 総合心理学部の北岡明佳教授に、私たちにも簡単にチャレンジできる「錯視の作り方」を紹介していただく。お子さんとの工作にも最適なので、ぜひ楽しんでいただきたい!

〈この記事のポイント〉
● 「存在しない色」が見える仕組みとは?
● 親子で作れる「歪んで見える錯視」
● シールを使って作る「回転錯視」も簡単!?
● レディー・ガガも注目した「美しき錯視」
● 北岡教授イチオシ 錯視作品6選

赤く見えるイチゴ。でも、見えている色が「ない」って!?

錯視画像

こちらの写真、若干青みがかっているものの、生クリームが入ったタルト生地に、たくさんの“赤い”イチゴが乗っているように見える。
しかし、「このイチゴは“赤くない”んですよ」と言われたらどうだろう? にわかには信じられないのではないだろうか。

では、拡大して見てみよう。

錯視の仕組み

このとおり、赤く見える部分をどんどん拡大していくと、そこには「赤い要素」はなく、青みがかったグレーがあるだけだ。まさに錯視! ではなぜ、私たちの目はグレーを赤だと感じるのだろうか?

人間の脳は、「存在しない色」を補完して感じている

錯視の仕組み

「上は、元画像と錯視画像において、横軸をRGBの輝度値、縦軸をその輝度値が画像上に出現する頻度として表したヒストグラムというグラフです。元画像では0から255の輝度にまんべんなく存在している色を、錯視画像ではR(赤)を輝度の低い領域でしか存在しないように変換しています。
錯視画像にもRは含まれますが、視覚的には「グレー」としてしか存在しません。しかし、分布の範囲が偏っている場合、視覚系は『それぞれの範囲が0から255になるように変換して色を見ているかのようにふるまう』という特徴があります。
そのため、実際にはグレーなのに、まるで赤いように感じてしまうのです」(北岡教授、以下同じ)

錯視変換ページ
RGB値のヒストグラム圧縮による色の錯視図形作成のJavascriptプログラム

こちらの北岡教授のサイトでは、自分でアップロードした画像を錯視画像に変換することができる。ぜひ試してみてほしい。

白と黒のマーカーで作れる「平面なのに歪んで見える錯視」

次は、子どもと一緒に簡単に工作できる錯視を紹介しよう。

錯視画像

濃淡のグレーでできた市松模様がある。その角(境界)に、白と黒のマーカーで「+」を描き込んでいく。

錯視画像

描き方は自由だが、一定の規則性を持って書き込んでいくとわかりやすい。
平面が飛び出したり凹んだり、さらには歪んで見えたりする。そして、画面をスクロールすると、模様がグニャグニャと動くように見えるはずだ。

錯視の仕組み

「これは、『縞模様コードの錯視』という錯視で、有名なフレーザー錯視に似た錯視を応用したものです。グレーの市松模様の境界にある白黒の『+』の位置関係により、境界線がズレたり動いたりするように見えます。
白黒の+の配置や規則性によってさまざま歪みになりますので、いろいろ試してみてください」

こちらから、高解像度の背景画像がダウンロードできる。白黒のマーカーを用意したら、いざダウンロードだ!

このほかにも、北岡教授のホームページでは、さまざまな錯視工作の紹介や素材ダウンロードが可能だ。タイトル画像で紹介したような、回転錯視にもチャレンジできるので、ぜひ遊んでみてほしい。

錯視の仕組み

「錯視は美しくなければいけない」北岡教授イチオシの錯視6選

北岡明佳教授
錯視研究の第一人者、立命館大学 総合心理学部の北岡明佳教授。手にしているのは、教授が考案した錯視作品が採用されたレディー・ガガのアルバム。

これまで、論文とともにさまざまな錯視作品を発表してきた北岡教授。その創作については、「1.知識を得て、2.検討して、3.暖めて、4.突然進歩する」過程を経ると語るが、印象に残ったのは「よい錯視図形(その効果が最大に引き出された錯視図形)は、自然と美しさを持つ」という言葉だった。それを裏付けるように、2013年には、レディー・ガガの新作アルバム盤面に北岡教授が考案した「ガンガゼ」という作品が採用されている。
視覚に、脳に、強く働きかけてくる錯視作品。「北岡明佳の錯視のページ」では、定期的に新作が公開されている。最後に、北岡教授イチオシの錯視作品をコメントとともにご紹介していこう。

1. 錯視的に赤い立命館大学の旗

錯視画像
赤い画素はないが、立命館大学の旗が赤く見える。

「『赤く見えるイチゴ』の色の錯視を、並置混色で表現したものです。赤く見えるイチゴの赤は灰色で表現しましたが、ここでは白と黒の縞模様で表現しています」

2. 赤い髪と服と緑の髪と服

錯視画像
左の髪と服は赤く見え、右のそれらは緑色に見えるが、どちらも青・黄・黒の縞模様でできている。

「『赤く見えるイチゴ』の錯視を応用し、灰色が赤く見える錯視画像(左)と灰色が緑色に見える錯視画像(右)を作成します。それらの灰色を青・黄・黒の縞模様で置き換えた並置混色画像が、この錯視画像です」

3. 動くパックマン

錯視画像
青と黄の円が動いているだけであるが、パックマンがパクパクしながら動いているように見える。

「この作品は、キックバック錯視(kickback illusion)を応用しています。キックバック錯視は、Howeらが2006年に発表した錯視です。詳細は、こちらをご覧ください

4. 扉を開けたまま走る電車

錯視画像
停車中の電車が右に走行するように見える。

「4枚の静止画を繰り返すことで対象が同じ方向に動き続けて見える錯視のデモです。新しい錯視とも言えますが、私はリバースファイの一種と考えております。詳細は、こちらをご覧ください

5.まつぼっくり

錯視画像
リングが回転して見える。

「2つの輝度の異なる領域が接していて、その周囲がそれらよりも暗い時、相対的に明るい領域から暗い領域の方向に(周囲との輝度コントラストの高い方から低い方に)動いて見える錯視です。私は『最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視・タイプIII』に分類しています。」

6. ほつれ錯視

錯視画像
実際は、2つの同心円なのだが…?

「同心円(中心が同じ円)がこんがらがっているように見える錯視です。外側と内側で渦巻き錯視の方向を変えることでつくります」

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北岡明佳教授

北岡 明佳

1961年生まれ。立命館大学 総合心理学部教授、教育学博士。錯視研究の第一人者として、錯視の心理学的な研究とともに錯視デザインを多数考案。自身のWEBサイト『北岡明佳の錯視のページ』にて公開しているほか、書籍や展覧会での発表も行う。

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