女流棋士・香川愛生とクイズ作家・古川洋平が対談!(後編)強みを活かして仕事の可能性を広げるヒント

2019年10月4日


前編では、将棋やクイズに出会ったきっかけや偶然について語った、女流棋士・香川愛生さんとクイズ作家・古川洋平さんの2人。後編では、本職を軸に多方面で活躍する原動力や、これからの時代を生き抜くための姿勢などについて語った。
(対談前編はこちら

香川愛生 Manao Kagawa
1993年生まれ、東京都出身。9歳から将棋を始め、中学生で女流棋士になる。2013年に女流王将を獲得し、翌年も防衛。現在は女流三段。女流棋士の活動だけにとどまらず、YouTubeチャンネル「女流棋士・香川愛生チャンネル」で詰将棋や対談などの動画を定期的に公開しているほか、ゲーム雑誌での連載など多方面にわたって活躍している。初の著書『職業、女流棋士』(マイナビ新書)が好評発売中。

古川洋平 Yohei Furukawa
1983年生まれ、宮城県出身。高校時代からクイズに本格的に取り組み始め、大学時代には学生日本一決定戦『abc』3連覇を達成。会社員や公務員を経て、2014年にクイズ作家として独立。クイズ法人カプリティオを立ち上げ、バラエティ番組の制作協力・出演などで幅広く活躍。YouTubeチャンネル「クイズ法人 カプリティオ」ではさまざまなクイズ動画を公開している。


「怖いけど、クイズを仕事にしよう」 会社員・公務員を経た独立の背景は

クイズ作家の古川洋平さん

――古川さんは3年連続で学生日本一になられたわけですが、卒業後は民間企業に就職されています。クイズを仕事にしようと考えなかったでしょうか?

古川:クイズという趣味を生きがいとして楽しみ続けたいという思いをそのころから持っていました。だからこそ「趣味を仕事にすると楽しめなくなるかもしれない」という恐れが強く、一度は検討したもののその道は選ばなかったんです。

香川:私は中学生で女流棋士の道に進んだから迷わずに済みましたが、好きなことを仕事にする生き方はメリットが多い反面、リスクも高いと思うんです。「仕事がうまくいかない=好きなこともうまくいかない」という、逃げ場の無い状態になってしまうかもしれない。古川さんはどんなきっかけでクイズを仕事に?

古川:僕が最初に就職したのは食品会社で、営業の仕事をしていました。成績もわりと良かったのですが、勤務時間があまりに長かったんです。そこで、時間の安定した仕事をしたくて公務員に転職しました。環境はとても良くなりましたが、激務の反動で仕事が淡泊に見えてしまって。

香川:時間やエネルギーを持て余しちゃいますよね。

古川:公務員はもちろんとても大切な仕事ですが、1回だけの人生で何をすべきか真剣に考えて、「やっぱりクイズだ」と思いましたね。公務員になってまたクイズの時間が取れたことにも助けられ、「一度はクイズを仕事にするのが怖かったけどやってしまおう。これを人生にしたい」と思いました。他の仕事をして初めて、クイズの大切さに気付いたんです
まだ結婚して間もないころでしたが、妻も「あなたは好きなことをやったほうがいい。最初はうまくいかなくても私が稼ぐから」と背中を押してくれて、クイズ作家として独立することに決めたのです。

長い歴史の中に自分ができることを探して

女流棋士の香川愛生さん

――香川さんも女流棋士としての活躍はもちろん、YouTuber活動や、『週刊ファミ通』での連載、「将棋×ゲーム」コラボのプロデュース企業を共同設立されたりと、多岐にわたる活動をされています。原動力は何でしょうか?

香川:一般的な棋士や女流棋士は対局が月1〜数局くらいで、時間の多い職業です。将棋をずっと指していれば必ず強くなれるわけでもないので、時間の有効な使い方は強く意識しています。
私の場合、将棋好きなファンの人を身近に感じ、応援していただきながら対局に臨みたいという想いがあるんです。そこで、たとえばYouTubeチャンネルを開いて、今は3手詰の詰将棋を定期的に公開して1.5〜2万再生していただいています。反響もたくさんいただいていて、対局やさらなる活動へのモチベーションになっています。

古川:YouTubeを通じて香川先生や将棋のファンになった人もいるでしょうね。

香川棋士として自分のできることを知りたい、確かめたいという気持ちはあります。平安時代から続く将棋の歴史で、私にも貢献できることがあるのはすごくありがたいことだと思うんです。

古川:既にある枠組みにとらわれず新しいことに挑戦する香川先生の姿勢には、僕もとても共感を覚えます。テレビ番組のためにクイズを作る仕事はとても面白いし、僕自身もたくさん貴重な経験をさせてもらいましたが、必ずしもテレビだけにこだわる必要はないと思っています。
ここ数年はクイズの役立つ場がテレビ以外にも増えているから、今はいろんな仕事の方法を模索している最中ですね。

香川:既存のコンテンツや媒体が正解という時代もあったと思いますが、今は自分の考えや作品を発信して形に残すハードルがとても低い時代です。かつては挑戦するだけでも大変だったことも、今は意欲の問題が大きくてアマチュアでも可能なことが多い時代だと思います。

古川:将棋はプロ資格があるから別ですが、プロとアマチュアの境目も曖昧になっていますね。YouTuberなんて芸能人か一般人か関係なく、人気のある人が再生数を稼ぐ。クイズも同じで、面白ければ誰が作っても評価されます。だからこそ、今後は本当に面白い・才能のある人が正当な評価をされて生き残る、ある意味で残酷な時代に突入すると思うんです。
香川先生も棋士として対局に臨むだけでなく、いろいろなことに興味を派生させて結果を出しているのには、今までとは異なる棋士の姿を目指す気持ちを感じます。

香川:既にある仕事には当然、私よりずっと上手にできる人がたくさんいらっしゃる。けれど、「既にある仕事×将棋」のコラボという形なら私が得意なこともあるはずだと思って、何かできることがないか日々探しています。

クイズ王の将棋クイズに香川愛生は答えられるか!?

香川:最後にせっかくだから将棋クイズをお願いします。答えられるかな。

古川:ひらめきました、問題です! その名前は棋士の大山康晴先生の出身地にちなむとされ……。

香川:出身地にちなむ……倉敷藤花戦?

古川:正解! さすがです。「その名前は棋士の大山康晴先生の出身地にちなむとされている女流棋戦の1つは何でしょう?」ということで、答えは「倉敷藤花戦」でした。

香川:面白いですね。「その名前は」という前フリが無かったら答えられなかった。

古川:その通りです! 「大山康晴先生の出身地」に引っ張られると「倉敷市」や「岡山県」という答えも浮かびますが、前フリに「その名前は」とあるから、出身地そのものではなく、出身地にちなんだ何かが正解だと分かる仕掛けです。それに気付いて答えているのが素晴らしい。

香川:ありがとうございます。古川さんのクイズをもっといっぱい解きたいですね。

――すぐに将棋クイズが出てくる古川さんも、即答した香川さんもさすがですね。最後に、今後の活動に向けた意気込みを教えていただけますか?

香川:今の活動にやりがいを感じていますし、方向性にようやく自信を持てるようになりつつあるので、YouTubeチャンネルやイベント企画は力を入れて取り組んでいきたいです。
将棋がなければ今の自分はないので、恩返しといいますか、感謝の気持ちを返していきたいですね。将棋や私の活動を通じて、笑顔になってくれる方を一人でも増やしていけるように頑張ります。

古川:クイズは本当に可能性を秘めているので、たとえば「教育×クイズ」のコラボや、企業向けのクイズ・キャンペーン提案など、さまざまなビジネスを模索して、いろいろな場所にクイズが存在する世界を作りたいと思っています。「知らずしらずに解いた問題が古川の問題だった」と後から分かるような、そんな風に皆さんと関われたら嬉しいです。


9歳から現在まで将棋と向き合い続け、YouTubeチャンネルやゲーム関連の仕事なども精力的にこなす香川さん。そして、一度はクイズから離れたものの、クイズの大切さを再認識しクイズ作家として独立する道を選んだ古川さん。
異なる道筋を歩んできた2人に共通して感じられるのは、好きなことを追究すると同時に、それを武器に新しい分野にも打って出るアグレッシブな姿勢だ。「趣味や強みで仕事の可能性を広げたい」「“脱正当”な人生を歩きたい」と望むビジネスパーソンや若い世代にも、大いに学ぶところがあるのではないだろうか。
(将棋やクイズに出会うまで、そして学生時代について語った対談前編はこちら

shiRUto 編集部

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