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マスク熱中症にも注意! 子どもの熱中症を予防する食事とは?

2020年6月11日



毎年、本格的な夏に入る前のこの季節は、第2の運動会シーズンでもあり、子どもの熱中症が懸念される時期でもある。今年は新型コロナウイルスの影響で運動会が中止になるケースが多くなっているが、気温も湿度も高くなる今、マスク着用が半ば義務化されることによる熱中症のリスクも懸念されている。

子どもの健康と命を守るために家庭でできる予防の一つが「食の工夫」だ。熱中症の予防に役立つ食材やメニューとはどんなものだろうか? また、新型コロナウイルスの影響で休校や在宅勤務が続く中で、親が食事を準備する負担も増している。準備の負担と栄養に対する配慮のあいだで、程よいバランスを取るための有効な考え方とは? 管理栄養士・健康運動指導士の資格を持つ保井智香子准教授(立命館大学 食マネジメント学部)に聞いた。

「朝食抜き」は熱中症リスクを高める

熱中症とは、体内の水分量・塩分量のバランスが崩れ、生理的な体温調節機能が失調することで起こる、身体のさまざまな不調を指す。その症状は、めまいや頭痛、吐き気から意識障害など幅広い。
食事から熱中症を予防する上で保井氏が大前提として強調するのが、水分補給だけではなく、朝昼夜の3食をきちんと摂り、身体を動かすエネルギー源となる糖質を確保することだ。

「特に朝食を食べないリスクは高く、運動を始めたときは身体の調子がよくても、気温や湿度が上がるにつれて気づかないうちに体調が悪くなることがあります。『いま元気だから大丈夫!』と油断しないでください。春先や初秋など気温がそこまで高くない時季は、厚着のまま運動を始めてしまい、体が暑さに慣れていないこともあり、体温が上手くコントロールできず熱中症になるケースも見受けられます」(保井氏。以下同じ)

水分量と塩分量のバランスに注意

3食をきちんと食べるという前提で、意識したいのが“水分量・塩分量のバランスの崩れ”という熱中症の要因だ。保井氏によれば、栄養学の観点からは食事には
①体を動かすために必要なエネルギーや栄養素を前もって蓄える
②身体活動によって失われたエネルギーや栄養素を補う
という2つの大きな役割がある。熱中症の予防には、汗によって失われる水分や塩分を運動の前後、両方のタイミングで摂ることが欠かせない。では、どんな食事が適しているのだろうか?

「飲み物から水分を摂るときは、コーヒーや紅茶、緑茶は避けましょう。利尿作用のあるカフェインが含まれているため、水分が尿として排出されやすく、場合によっては脱水になる可能性があるからです。麦茶はカフェインがなくてよいですね。子どもがジュースを飲みたがるときは、清涼飲料水よりも果汁100%のオレンジジュースがおすすめ。ビタミンCも摂れるので、アスリートもよく利用しています。食事から水分を摂りたいときは、野菜スープや具だくさんの味噌汁などの汁物が最適で、水分のほかに塩分やカリウムも補えますよ」

また、汗をかくと水分・塩分だけでなく、鉄やカリウムといったミネラルも失われる。これらを補うには栄養密度の高い食材を選ぶことがポイントだ。
「色が濃い緑黄色野菜は、淡色野菜よりもミネラルやビタミンが豊富です。積極的に食べてみてください。たとえば野菜ならキュウリよりもほうれん草や小松菜、ブロッコリーがいいですね」

そして野菜だけで補うのが難しいのが、食べ物の栄養素をエネルギーに変換するために不可欠なビタミンB群だ。ビタミンB1、B2などが足りないと、エネルギーが円滑に産生されず、暑さや運動による疲れを回復できず熱中症のリスクが高まるおそれがある。ビタミンB群の豊富な食材として代表的なのは、
・豚肉
・大豆食品(豆腐、納豆など)
・卵
など。中でも、ビタミンB群を摂るために保井氏が特にすすめるのは豚汁だ。豚肉はビタミンB1はもちろん、水分やタンパク質、ミネラルなども多く補給できる。

よく外で遊んでいた子どもほど危険? withコロナの「子ども食」

コロナ禍のもとで外出機会が減っている今、子どもの栄養についての懸念は大きい。休校が続いて子どものエネルギー消費は減っているのに対して、お菓子やジュースを口にする機会は増えていると考えられるからだ。子どもの身体は日々成長するもので、そのためのエネルギーは不可欠だが、筋量の増加がともなわない体重増加は避けたいところ。

「特に注意すべきは、普段からよく外で遊んだり運動していた子どもです。食事量がそのままだと、消費されないエネルギーが体脂肪として身体に蓄積してしまうおそれがあります。『おかずを一品減らす』というやり方は難しいでしょうから、一品ごとの食べる量を一口ずつ減らすといったアプローチを検討してみてください。『お菓子やジュースを食べない』というのも難しいと思いますので、食べ過ぎないように食べる量を決めましょう。」

また、コロナ以前よりも自宅で子どもの食事を用意する頻度が高まり、疲弊する保護者も出てきている。準備の負担と、栄養への配慮。このバランスを取るコツは何だろうか?

「もちろん、主食・主菜・副菜のそろったバランスのよい食事を準備できるならば、それがベストです。でも、毎回そんなに何品もおかずを用意するなんて、現実問題として負担が大きすぎますよね。一食だけで栄養を完璧に摂ろうとはせずに、『昼食は丼もので野菜がなかったから、夜は野菜を多めに食べよう』とか、前の食事で足りなかった栄養は次の食事で補って、日単位で栄養が偏らないようにすると楽です

ご飯やパンなどの炭水化物、肉や魚のたんぱく質、野菜のミネラルやビタミンなどさまざまな栄養を取り入れることが大切だと頭ではわかっていても、実際に朝昼夕の3食すべてを毎日自宅で作るのは難しい。

出来合いの商品を食卓に出すのが後ろめたいという人はプラスαのアレンジを試してみてください。たとえばタレ付きの焼き鳥だったら、お肉を串から取って玉ねぎやキャベツと炒めれば、しっかり味のついた野菜炒めが手軽にできます」

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