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「日本人はシリコンバレーで活躍できない」は思い込みかもしれない

2019年3月26日




カリフォルニア州・サンフランシスコ南部に位置するシリコンバレーには、最先端のテクノロジーと人材が集まる。”GAFA”のGoogle、Apple、Facebookを筆頭に多くの有名IT企業が本社を構え、名門スタンフォード大学はGoogle共同創業者のラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンなど多様な人材を輩出してきた。

そのような“最先端”のイメージや、日本の3倍とも言われる高額なエンジニアの平均年収から「シリコンバレーで活躍できる日本人は一部のスーパー人材だけ」と思う人もいるかもしれない。

技術レベルに決して大きな差はない、シリコンバレーと日本


しかし、10年間にわたってシリコンバレーで働いてきた経験を持つ森山俊彦さん(47歳)は「特別にずば抜けたスキルを持たない日本人エンジニアでも、シリコンバレーで活躍できる可能性は大いにある」と考えている。Intel社、そして現在はスタートアップ企業とシリコンバレーの半導体業界で品質評価エンジニア(Validation engineer)として働き続けてきた森山さんは次のように語る。

「現地に来る前は、シリコンバレーには太刀打ちできないような優秀な人ばかりというイメージだった。しかし実際はそんなことはなく、技術レベルは日本人と対等に近いと感じます。私も毎年の人事評価レビューでは、確実な仕事をする人材と評価されてきました」(森山さん、以下同じ)

日本国内で培った製品開発などの経験を活かし、シリコンバレーでも活躍する森山さん。数年前にスポーツ界で「ジャパン・ウェイ」という言葉が流行したように、いわゆる“日本人らしさ”はシリコンバレーでも武器になるのだろうか?

「多民族、多文化が入り混じったシリコンバレーでは特定の国や民族にフォーカスする考え方は好まれないどころかむしろタブーです。『君は日本人だから〇〇をやってくれ』『インド人だから△△が得意だろう』という言い方は絶対にしません。国籍や肌の色を意識しないほうが良い仕事ができるというのが、ここでの共通認識ですね。私も今までの仕事の経験から、品質については高い感性を持てていると自負していますが『日本人だから品質に自信がある』という風には言いません」

シリコンバレーと日本は「コミュニケーション」と「上下関係」が正反対


シリコンバレーのそんな多文化環境の中では、コミュニケーションも直接的かつ具体的であることが求められるという。

「重要なのは、できないことは『できない』とはっきり伝え、できることは確実にやり遂げること。『できます』と言うときも注意が必要。多様なバックグラウンドを持つ人がいるため、同じ言葉から異なるイメージをお互いに思い描く可能性もあるからです。そのようなズレに文句を言っても仕方ない。曖昧な言葉は、話し合いで細かくヒアリングして具体的な内容を明らかにすることが不可欠です」

「直接的かつ具体的」を是とするコミュニケーションのあり方は、働くひと同士の関係性にも影響を与えるのだろうか?

上下関係のあり方は日本とまったく異なります。マネージャーと一般スタッフでも『上司と部下』という感じは無く、対等な技術者として互いに接します。正直なところ、現地に来る前はもっとギスギスした『サバイバル競争』のような雰囲気をイメージしていましたが(笑)、実際は皆で協力して働いています。企業を超えた横のつながりも重視されていて、さまざまな分野で定期的な勉強会やカンファレンスが開かれています。日本人エンジニアの集まりもありますね」


森山さんはシリコンバレーに対して「純粋なエンジニア集団」のような印象を抱いているという。

「シリコンバレーのエンジニアは会社のために働くというよりも、どのような成果を上げ、経験や技術を身につけ、今後も長く活躍できるエンジニアでいられるかを常に考えながら働いています。転機が訪れれば起業したり転職する人が多い。シリコンバレー全体がひとつの会社のような雰囲気もあり、働く人は自社の業績が悪くなれば好調な他社に身軽に転職しています」

「リスクを取る」が風土のシリコンバレー 意欲ある若者はやみくもに怖がらずチャレンジすべき

コミュニケーションや人間関係、仕事観など多くの点で世界のどんな場所とも違う、シリコンバレーという土地。そのユニークさはいったいどんな風土から生まれているのだろうか?

シリコンバレーにあって日本に無いのは、『リスクを負ってでも新しい製品やサービスを作る』という風土です。例えば起業する場合も、成功・失敗を問わずチャレンジ自体に価値があるという考え方がシリコンバレー全体で前提とされている。そうであればこそ、シリコンバレーはこれからもイノベーションが生まれる街であり続けるでしょう」

内向きと評されがちな日本の若者。とはいえ、最先端のテクノロジーや人が集まるシリコンバレーで一度は働きたいと考える人は、エンジニアを中心に少なくないはずだ。若手ビジネスパーソンや学生に向けたメッセージを聞いた。

スタートアップが多いシリコンバレーは、エンジニアが活躍できる街。さまざまな国から集まって互いを刺激し合う環境は、エンジニアとしてチャレンジしがいのある場所です。日本人は世界に引けを取らないので、自信をもってチャレンジしてほしいですね」

近年、テクノロジーの追い風を受けて働き方の自由度が高まっている。自分の力を頼みに未知の環境に挑戦しやすくなっている時代だ。今後は、森山さんが期待するように「海外で活躍できるのは一部の人だけではない」と、より多くの日本人が国境を超えて身軽に働くようになるにちがいない。

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