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最近地震多い? 意外と知らない「揺れ」への対処&「地震予測」の最前線

2022年5月19日


最近地震多い? 意外と知らない「揺れ」への対処&「地震予測」の最前線



2022年3月16日の福島県沖の地震は、マグニチュード7.4、最大震度6強を観測するなど、東日本大震災の再来を思わせる“揺れ”に動揺が走った。一部では、東日本大震災でも倒壊しなかった建物が倒壊するなど、その揺れの大きさが報じられたが、実はそこには「揺れが顕著になる周期」が関係しているという。発生が予測される大地震に対し、我々はどう対処するべきか。また、地震予測の最前線はどうなっているのか。立命館大学 理工学部の川方裕則教授に聞いた。

〈この記事のポイント〉
● 日本列島における、活火山と震源の分布はどうなっている?
● 「プレートがすべる持続時間」「揺れの周期」が被害の種類を分ける
● 研究者が注目する「極微小な前震」
● 地震と共に生きるための心構え

この地震の多さも、地震大国日本の「通常運転」!?

政府の地震調査委員会によれば、2022年3月16日に福島県沖で発生したマグニチュード7.4の地震をはじめ、3月には日本周辺でマグニチュード4以上の地震が195回発生したという。これは通常の倍以上の回数にのぼるが、委員会は、私たちの住む日本列島では普段からその程度の数の地震が起きているという見解を示した。
では、「地震大国」といわれる日本が、どれほど地震と密接なのかを、図で見てみよう。

活火山の分布と震源の深さ
活火山(▲)の分布。活火山は海溝と平行に並んでいる。点は震源を示し、色は震源の深さをあらわす。(出典:地震調査研究推進本部ウェブサイト)

「太平洋プレートが、千島海溝、日本海溝、伊豆―小笠原海溝で西側に向かって沈み込んでおり、その内側に活火山が分布していることがわかります。また、海溝と火山を挟むエリアでは震源が浅く、海溝から離れるに従って太平洋プレート内の地震の震源が深くなる傾向があることもわかっています」(川方教授、以下同じ)

プレートとマントル
(出典:東北大学ウェブサイト)

「火山活動の原因ともなるマグマはプレートが作り出しているのではなく、上図でいえば左上のマントル部分に存在します。何もしなければマグマが勝手に噴き出すことはありませんが、プレートが沈み込んである深さまで到達すると、プレート中に含まれるH2Oが『熱水』と呼ばれる状態で吐き出されます。熱水と混ざり合うことでマントルの融点が下がってマグマとなり、比重が小さくなって上昇しやすくなってしまうのです。マグマが上昇し、地表に到達すると火山噴火やマグマの噴出になります。
ある程度温度が高くないと熱水が供給されずマントルが溶けないので、プレートの境界からやや離れた場所に火山ができやすいのです」

我々の住む日本列島の地下深くで、このようなダイナミックな地球の動きがあるのだという認識は、普段ほとんどの人が持っていないだろう。一方で、これらの火山があるからこそ、日本列島そのものが存在していることは間違いない。改めて、日本という国が火山や地震と密接に関わっていることが理解できるはずだ。

「揺れの周期」が被害を受ける建物の大きさや高さに関係する

3月16日に福島県沖で発生したマグニチュード7.4の地震では、非常に大きな揺れを観測した。3.11の東日本大震災時の地震とも異なる揺れ方だというが、どういうことか。川方教授に解説してもらった。

3.11の地震は『プレート境界型地震』と呼ばれるもので、沈み込む太平洋プレートと、陸側のプレートの間で、プレート同士が“すべった”ことによって発生しました。この時は、プレートが500〜600キロという長い範囲ですべりました。プレート自体がすべり続けている時間が2分にもわたり、【長い周期の揺れ】が強かったのが特徴でした。
一方で3.16の地震は、沈み込んだプレートそのものが割れてすべる『スラブ内地震』と呼ばれるタイプと考えられます。マグニチュードが7.4と3.11に比べて小さいこともあり【短い周期の揺れ】が強いという特徴があります。
ひとつの地震にはさまざまな周期の【揺れ】が含まれますが、特に揺れが顕著になる周期(専門用語で揺れが卓越する周期という)が違います。例えば、高層ビルや石油タンクなどの大規模構造物にとっては、【長い周期の揺れ】が大きな影響を与えます。
周期が1秒以下の【短い周期の揺れ】は2階建てくらいの建物にはあまりよくない周期なのですが、もう少し長い1~2秒程度の周期の揺れが一番嫌な周期です。
3.16の地震で、東日本大震災を耐えた建物が被害を受けた例がありましたが、1~2秒周期の揺れが3.11の時よりも強かった場所があることがわかっています」

最先端の地震予測研究が迫る「極微小な前震」

川方教授の専門は、地震が発生する機構の解明だ。実験・観測を通じて地震波記録などを解析しながら、地震の破壊過程・前震活動・地震波の伝播様式の変化などに迫っている。そんな川方教授らが現在注力しているのが、地震の前兆となる揺れ「前震」を捉えて、地震予測に生かせないかという研究だ。

極微小な前震の発見

「これは2008年に起きた岩手・宮城内陸地震の前震のデータです。この地震では、“重力加速度の4倍”という、日本で一番強い揺れを記録しました。我々が注目しているのは、本震が起こる前の45分間に、そっくりの波を出す小さいイベントが立て続けに起きていることです。そのような波は過去2週間は観測されておらず、直前の45分間にだけ見られます。
このように、地震前に起きる特徴を抽出することができれば、地震予測に活用できる可能性があり、さまざまな過去の地震データの精査を進めています」

たびたび大地震に見舞われることが避けられない日本において、地震発生予測の進歩には大きな期待がかかる。印象深かったのは、川方教授の「地震は、起きる前から自分が起こす地震の規模を知らない可能性がある」という指摘だ。

「『大地震』というものがはじめから用意されていて、時が満ちてそれが起こるわけではない可能性があります。起きてから初めて、さまざまな条件や要因が複合的に積み重なり、地震の規模が決定するかもしれないのです。
その意味でも、地震発生予測をメインに置きすぎてはいけません。いつ、どんな揺れが起きるかわからないという前提を持つことが重要です」

ホイッスルで生存確率アップ & 家族の「保存食デー」がおすすめ

日本列島では、多かれ少なかれ、地震とともに生きていく覚悟が必要になる。最後に、川方教授が薦める「生存確率を高めるアイテム」と「保存食の活用方法」を紹介しよう。

「シンプルですが、ホイッスル(笛)として使えるものを持っていると、叫んで体力を消耗することなく存在を示すことができ、いざという時の生存確率を高めることになると思います。最近ではLEDライトが付いたものもあり、光を出しながら笛を吹いて存在を知らせることもできます。
また、家庭に備蓄しておく保存食も重要ですが、一方で『いつの間にか消費期限が切れたので捨てた』という経験がある方も多く、上手に活用できていない現状があります。
ひとつ提案したいのは、年に1度、賞味期限が近づいたらでもいいし、関西の方だったら1月17日でもいいし、関東の方だったら9月1日でもいい、あるいは東北の方だったら3月11日でしょうか。過去の地震を振り返る日に、『この1年も無事で良かったね』という感謝とともに保存食で食事をする習慣を付けることです。
万一への備えや避難方法などを家族で話し合う機会にすると同時に、保存食を新しいものに交換するというサイクルが自然に起こっていくようにするのです。災害への意識を新たにすると同時に食料の確保にもつながるのではないでしょうか」

「地震=悪いこと」と考えがちだが、川方教授は「地震とともに生きる」前提となる心の持ちようについて、以下のような視点を提案する。

「我々は地震を悪いものだと思っていますよね。しかし、たとえば琵琶湖の向こうには比良山系が広がっていて、非常に美しいですよね。あれは地震がなかったらつくられない地形です。日本の景観というのは、火山や地震といった自然現象と切っても切れない関係をもっているといえます。
あるいは、断層運動によって割れ目ができて、そこから水が流れてくるから地下水が湧いてくるわけです。それらの水が川となり、我々は農耕ができる。時に大きな被害を与えることもありますが、地球の営みは、決して悪いことばかり引き起こすわけではありません。その上で、共に生きる方法を考えるべきなのではないでしょうか」

立命館大学 理工学部 川方裕則教授

川方裕則

立命館大学理工学部教授。兵庫県明石市出身。京都大学理学部卒、同大学院理学研究科修士課程・博士後期課程修了、博士(理学)。科学技術特別研究員(地質調査所)、京都大学防災研究所助手、立命館大学准教授を経て2012年4月より現職。専門は地震学、岩石力学で、「直接測る,目で視る」ことに力点を置き、実験を併用しながら地震の発生機構や地震波の伝わる仕組みについて研究。

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